協議離婚なら理由を問わず離婚が成立する
離婚には協議離婚、調停離婚、裁判離婚などがありますが、基本になるのはあくまで夫婦双方の合意で成立する協議離婚です。合意さえあれば良いということは、どんな理由でもかまわないということでもあります。
必要なのは離婚届への二人の署名捺印だけ。あとは役所が自動的に受理してくれます。ただし夫婦双方の話し合いができなかったり、話し合いで合意が得られなかったりした場合は、交渉の場所を裁判所に移すことになります。
とはいえ、いきなり裁判を起こすわけではなく、まずは第三者の調停委員が間に入る調停手続きをおこないます。
裁判所の手続きの際は法定離婚原因が必要
協議離婚ができない場合は裁判所に調停の申し立てをして、調停委員を通した協議で離婚の成立を目指します。専門の第三者である調停委員は、夫婦双方の主張を聞いた上で調停案を提示しますが、それでも一方、もしくは双方がその調停案に合意できない場合は、いよいよ裁判の申し立てをおこないます。
裁判をおこなう上で必要なのは法定離婚原因です。これにはいくつかの種類がありますが、その根拠となる証拠が提示されて裁判官が納得すれば、離婚を認める判決が出されることになります。判決には強制的な効力があるので、相手方がこれを拒否することはできません。
法定離婚原因には5つの種類がある
- 肉体関係を伴う不倫や浮気などの「不貞行為」
- 生活費を渡さずに放置するなどの「悪意の遺棄」
- 行方不明・生死不明の状態が3年以上続くこと
- 強度の精神疾患にかかり回復の見込みがない場合
- その他、結婚生活を継続するのが困難な重大な事由がある
不貞行為があった場合
いわゆる浮気や不倫が「不貞行為」ですが、特に自由意志による肉体関係がある場合は法定離婚原因として認められます。この不貞行為に基いて離婚を要求したり慰謝料を請求するには、行為の存在を立証しなくてはなりません。具体的には不貞行為の相手、ホテルに出入りする写真、といった証拠が必要です。内容次第ではメールの記録なども証拠になる可能性がありますが、できれば反論できないような強い証拠が欲しいところです。
どうしても不貞行為を立証したい場合は、費用は高額ですが探偵事務所に浮気調査を依頼するという手もあります。
悪意の遺棄をされた場合
正当な理由もないのに配偶者を家から追い出してしまったり、同居はしていても、収入のない配偶者に生活費をまったく渡さないなどの行為が「悪意の遺棄」です。また、自分の方が勝手に家を出て別居を始めたり、配偶者が家を出ていかざるをえないほど精神的に追い詰めることも悪意の遺棄になります。これらの行為によって精神的な苦痛を受けたと認定された場合は離婚原因として認められます。
生死不明が3年以上続いた場合
配偶者が3年以上も行方不明になるとしたら、どんな原因が考えられるでしょうか?事故に遭った、急病で倒れた、何かの事件に巻き込まれたというケースも考えられますが、場合によっては不倫相手との駆け落ちということもあるかもしれません。理由はどうあれ、3年以上生死不明の状態が続いた場合は離婚原因となります。この理由で離婚を申し立てるには、警察に捜索願を出したことを証明する「捜索願受理証明」を提出する必要があります。
回復が見込めない強度の精神病になっている場合
法律上はもちろん一般論としても、夫婦の一方が病気になった場合はもう一方はそれを支え、共に協力し合って生活していかなければなりません。とはいえ病気の種類が統合失調症や躁うつ病といった思い精神障害だったり認知症だったりする場合、それを支える配偶者には大きな負担がかかりますし、生活にも深刻な影響が出かねません。
このため、こうした病気は離婚原因として認められることになっています。ただしどの程度の精神障害から離婚が認められるかは個別の事情によって異なるため、必ず離婚が認められるとは限りません。さらに、認知症などの場合は先に「成年後見人」の申し立てをしてから離婚の申し立てをしなければならないこともあります。
その他、婚姻を続けるのが難しい重大な事由がある場合
ここまでに書いた通り、離婚が認められる理由にはさまざまなものがあります。ただし実際の判断は個別のケースごとにおこなうので、ある程度の離婚原因や事由があるとしても、必ず離婚が認められるとは限りません。裁判では裁判官の心証も判決に大きく影響するということは覚えておいたほうがいいでしょう。